ストーリー

小話

宮坂蓮のとある話

過去

部活の休憩中、黒田さんが口を開いた。 
「なぁ、お前らの遅刻癖とかって昔からなのか?」 
真波と宮坂を見て言った。
「え〜?私山岳の中学時代の話知らないから分からないです!」
「オレも蓮の中学時代知らないです〜。」 
「お前ら中学別なのか?」 
「はい!私は大阪でした!」 
「大阪なのか。どんな感じだったんだ?」 
一瞬、宮坂の顔が固まった。 
「悪い、聞いたらダメだったか?」
「いえ、でも今と全然違うので、驚くかもしれないです。」 
「なになに〜なんの話〜?」
ノルマを終えた葦木場が話に加わった。 
「私の中学の頃の話です!今と全然違ったんです。」 
「え!?そうなの?想像できない。」 
「向こうの友達は章ちゃんだけでしたし、
自転車も一人で乗ってました。
行ったばかりの頃は、
たくさん話しかけてくれたり
したんですけど、
私はなにをするにも
坂を優先してたところがあって、
人付き合いが下手くそだったんです。
告白された時にも、
坂登りたいからって断って、
遊びに誘われた時も、
レースがあるからって。
だんだん遠巻きにされて、
陰口を言われるようになって、
ますます学校に行かなくなって、
山に行くことが多くなりました。
久しぶりに行った時はなるちゃんだけが
話しかけてくれて…。
うーん、周りからしたら、
私の行動はおかしかったんでしょうね、
優先順位の1位があの時は坂だったし。
いわゆる異端児ってヤツです。」
宮坂は俯いたまま話した。 
「今は山岳も委員長もいるし、
優しい先輩もいるので、
すごく楽しいです!
でも坂が優先順位上位にあるのは
変わらないです!」
宮坂が顔をあげると真波も
黒田も葦木場も驚いた顔をしていた。 
「あれ、どうしたんですか?」
「ううっ蓮ちゃんにそんなことが
あったなんて〜!
今日から俺蓮ちゃんに
優しくするね!」
葦木場は泣きそうになっていた。
「え、葦木場さんいつも
優しいですよ?」 
「今日から山に毎日行くの
許すから〜!!」 
「お前は許可を出せる立場じゃないだろ!」
「今日から毎日山行こうね蓮。」 
「やった!山岳と山行けるの嬉しい!
ユートも誘お!」 
「競走しよう!
ギリギリの競走を!」
「うん!」
「新開誘うのはいいけど
毎日はダメだぞ!?
わかってんのかホワホワコンビ!
いつの間にか毎日行ってもいい
みたいな雰囲気になってるけど!」
「せっかくいい雰囲気なんだから
邪魔しちゃダメだよユキちゃん。」 
「そうですよ黒田さん。」 
「俺が悪いのか!?」 
その時、部室の扉が開いた。
「見つけた蓮!山岳!今日こそ
プリントやってもらうわよ!」
開けたのは委員長だった。 
「委員長!
それ今日じゃないとダメ〜?」 
「ダメよ!今日が締切なの!
ほら来なさい!」 
「は〜い。じゃあ黒田さん、
泉田さんに言っといてください!」 
「おー、言っとくわ。」 
「行こ〜蓮。」 
「うん!」


宮坂と真波は部室を出て委員長と共に校舎へ歩き出した。
「ねえ蓮。」
「なぁに?」 
「オレね、蓮と山行くの
楽しいよ。」
「!」 
「蓮は?」
「私も楽しいよ!だって大好きだもん!」
「ちょっと早く来なさい!
時間足りなくなるわよ!」
「行こ?」
 真波は宮坂に手を差し伸べた。 
「うん!」 
宮坂は真波の手を取りしっかりと握った。
その日の天気は清々しい程快晴だった。